大型工事の受注契約等により業績は好調です。
Q.
当社は総合工事業を営む法人ですが、大型工事の受注契約等により業績は好調です。今回、グループ内の事業環境や業績等を考慮し、債務超過にはまだなっていないものの子会社への貸付金を債権放棄し、整理することに決めました。この整理に当たって子会社整理損を計上しましたが、問題があるでしょうか?
A.
親子会社であっても、各々が別の法人であることから、子会社の整理にやむを得ずその損失負担等を行うに相当の理由があると認められなければ、子会社整理損が認められません。
債務超過の状況ではない子会社に対する債権放棄について、子会社の損失負担を行うに相当な理由及び損失負担額の合理的算定の根拠が不足していたことが問題です。
子会社が経営危機にひんして解散等をしても、親会社はその出資額を回収できないだけであり、その以上に新しく損失負担をすることは不要であるという考え方が存在します。ご質問のケースにおいては、子会社の整理に際し、実質債務超過ではなく、子会社を整理することで後に被ると思われる大きな損失を避けられるとは考えにくいことから、子会社整理損として処理するのは不可能であると考えられます。
ご質問のケースでは、支援なしでは整理が不可能であるか否か、損失負担(支援)の額が合理的に算出されているか否かについて、検討を要します。
○子会社等の財務内容、営業状況の見通し等及び自助努力を考慮に入れたものになっているか。
○損失負担額が、子会社整理のため又は経営危機を避けて再建するための必要最低限の金額であるか。
検討すると、子会社が経営危機に陥っていたか、損失負担等の合理性の判断に関する根拠についての検討不足から、寄附金となるのではないかと思われます。
法人税法においては、寄附金自体に関する直接的な定めは存在せず、寄附金の額に関する定めがあることで、間接的に寄附金が定義されています。
子会社整理に当たっての損失負担等については、法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡に伴って、その子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等を行った場合に、その損失負担等を行わないと今後より大きな損失を被ることとなると、社会通念上明白に認められるか否かを検討する必要があります。
子会社等を整理する場合における損失負担等の額の損金算入が認められるためには、次のようなことを総合的に検討し、その損失負担等が経済合理性を有しているか否かを判断します。
○損失負担等を受ける者は、「子会社等」に該当するか。
○子会社等は経営危機に陥っているか(倒産の危機にあるか)。
○損失負担等を行うことは相当か(支援者にとって相当な理由はあるか)。
○損失負担等の額は合理的であるか(過剰支援になっていないか)。
○整理・再建管理は行われているか(その後の子会社等の立ち直り状況に応じて支援額を見直すことになっているか)。
○損失負担等の額の割合は合理的であるか(特定の債権者だけが不当に負担を重くし又は免れていないか)。
○損失負担等を行う支援者の範囲は相当であるか(特定の債権者等が意図的に加わっていないなどの恣意性がないか)。